■■ IMITATION LIFE〜第1章・真実 2話 ■■
レオルの依頼を受けてから数週間。
ラシェルはすでに森の中で数日を過ごしていた。
ラシェルが手にした銃から白い光が放たれる。
光はモンスターを貫き、モンスターは大きな音を立てて倒れ、その姿を無へと還していく。
そんなことがもう数えるのも面倒くさくなるほど繰り返していた。
「ったく、うっとおしい・・・・・・」
言いながらもラシェルは銃を撃ち、また一体のモンスターが消えていく。
そしてまた、後ろから物音がした。
「はぁ。・・・歓迎にもほどがあるっつーか・・・・・」
ラシェルは振り向きざま銃の引き金を引く・・・・・・・・・・・・・が。
カチッ。
銃は小さな音を響かせるのみ。
「げっ!」
よく見ると銃のエネルギー残量はゼロになっていた。
「うそだろぉーーーっ!」
とりあえず、ラシェルは慌ててその場から走り去った。
モンスターは逃げるものに興味を持たなかったらしく、思ったよりも簡単に逃げることができた。
「たっ・・・・・・たすかったぁ・・・・」
安心と同時に自己嫌悪に陥る。
いつも祖父に言われていたことを忘れていた。
銃を使うときはいつもエネルギー残量や弾丸数に気を使うこと。
必ず、補充用の弾を持っておくこと。エネルギー銃のほうが便利でも必ず弾丸銃も持っていくこと。
しかしラシェルは今回エネルギー銃しか持っていない。
エネルギー銃は弾丸銃よりも軽く、一回の補充で弾丸銃より多く撃てるかわりに補充に手間がかかる。
弾丸銃は弾さえ持っておけばすぐに補充できるしその補充にも時間はかからない。エネルギー銃も補充用の機械はそんなに大きくはないが重さがあるため歩き回ることなどを考えると一つくらいしか持つことはできない。
しかも補充するためには数日間太陽光にあてて、エネルギーを溜めておく、という作業が必要になる。
いつもなら銃に入れておいた分と機械に補充してた分で十分に足りる・・・・・・・どころか、補充することもめったにない。銃に補充していた分だけで足りるのだ。
しかし今回は銃の分も機械に補充されていた分も全て使い果たしてしまった。
銃にエネルギーを補充した時点で補充用機械へのエネルギー充填もしていたのだが、エネルギーの補充が完了するまでにまだ数日かかる。
本来ならその間は弾丸銃を使って凌げばいいのだが・・・・・・。
(やっぱりオレって半人前だぁ・・・・・。これからどうしようか)
今ある武器はエネルギーなしのエネルギー銃と、いつもなら谷を渡るときや高いところに登るときに使う鞭の二つ。エネルギー銃は現在役立たずだから残るはひとつ。
(・・・・これであと何日か持たせろってか・・・・)
「あ〜あ・・・・・・」
大きく溜息をついて、ガクっと肩を落とす。
だが、落ち込んでばかりもいられない。落ち込んだって事態は何も変わらないのだ。
「やるしかないか!」
気合の掛け声とともに覚悟を決めて、ラシェルはさらに森の奥へと入っていった。
ラシェルはモンスターとまともにやりあうことを避け、巧みに鞭を使って木の上を進んでいった。
木の上が完全に安全だとは言えないが一歩進めばモンスターに遭遇する地上を進むよりはマシだろう。
そしてさらに数日後、ラシェルの目の前にそれが現れた。
森が不自然に途切れて、小さな野原ができている。
その中心には石のようなものでできた四角い台座。そこには紋章が描かれている。
リディアの技術によって作られたものに必ずと言っていいほど描かれている紋章だ。
台座の四隅に円柱が立っていた。
(なんだ・・・・・?)
初めて来たはずの場所なのに見覚えがあった。
ラシェルの胸に不安がよぎる。
なにか・・・・・・・・大切なことを忘れているような気がした。
ラシェルは大きく深呼吸をした。
(・・・・・大丈夫、落ち着け)
そう自分に言い聞かせながらゆっくりと遺跡に近づいて行く。
ラシェルは遺跡に足を踏み入れた。
「よし」
何も起こらなかったことに安心したラシェルは遺跡を調べ始めた。
しかし、一度は安心したもののやはり不安は消えない。
「ったく・・・。なんなんだよ」
ラシェルは小さく呟いた。
まるで不安を吐き捨てるかのように・・・・・・。
まずは四隅の柱を調べた・・・・が何もわからない。
そして台座を調べ始めた。周りから調べてだんだん中心部へ。
何も見つからないまま、ラシェルは小さな台座の中心部へと近づいて行った。
そしてちょうど中心部に立ったとき、ラシェルは自分の意識が遠のいていく事に気づいた。
ラシェルは慌てて遺跡から離れようとした。
だがすでに時遅く、ラシェルはその場で意識を失った。
「・・・・・あれ?」
次に気づいたときラシェルは森の外にいた。
「えっと・・・」
(あれは転送装置だったのか?)
とにかくここで考えていても何もわからない。ラシェルはもう一度遺跡に戻るために森へ入ろうとした。
「なっ!? 森が・・・・・・」
木がなぎ倒されている。遺跡から森の外の方向に向かって。
「どうなってるんだ?」
今度は最初に遺跡に向かったときよりもずっと簡単に遺跡にたどり着くことができた。
なぜなら、木々と一緒にモンスターも倒されていたからだ。
(いったい誰がこんなことを・・・・・・)
疑問は次々に沸いてくる。
同時にあの不安がまた膨らんできた。