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 IMITATION LIFE〜第1章・真実 5話 

「どういうことだ?」
  最初に沈黙を破ったのはラシェル。
  フィズは俯いたまま、なんとか答えようとしているがなかなか言葉が出てこない。
  また沈黙の時間が流れる。
「・・・・・・・おい」
  ラシェルは無理やりフィズに自分のほうを向かせた。
  そこでフィズは初めて気づく。ラシェルの目が全然怒っていないことに・・・・・。
「・・・・ラシェル・・怒ってないの・・・?」
「姿が違っててもフィズはフィズだからな。すぐにわかった。あのくらいの意地悪はしたっていいだろ」
「え・・・ひっどーいっ! 気づいてたくせに何も言わなかったの!?」
  ラシェルはあきれたような目で言った。
「ひどいのはどっちだ。・・・・ま、フィズはオレのことを考えて本当のことを言わなかった部分もあるみたいだから許してやるよ」
  ラシェルの言葉にフィズはビクリと身を竦め、ついと視線を逸らした。
  フィズは、ラシェルが気づくとは思っていなかったのだろう。
「・・・・フィズ。あんまりオレを見くびるなよ? こう見えても、立派な考古学者なんだからな」
  フィズはどちらかというと考えていることがすぐに顔に出るタイプ。
  付き合いの長いラシェルにはフィズが考えていることならだいたいわかる。
「・・・・わかっちゃった?」
  フィズは、泣きそうな声で言う。
「ああ。どの部分が嘘なのかも大体予想つくぞ」
  見ているこっちが辛くなってくるくらいに自分を責めてしまっているフィズの心をを少しでも軽くしたい。
  そんな想いをもって、ラシェルはからかうように言った。
  フィズはそのニュアンスに気づかない。気づくような余裕はない。
「せっかくだから答え合わせしたいし、本当のこと教えてくれないか?」
「・・・・・言ってみて・・・・」
  フィズはぼそりと言った。
「まずはオレの生まれのこと。
  魔機技術ってのは機械と魔法の融合技術。それで造られたのにわざわざ脳の部分だけ別々にするわけがない。核と機械脳は完全に連動してるはずだ。だから片方だけが起動するなんてことはない・・・・そうだろ?」
  ラシェルは講義でもしているような口調で言った。
  フィズは悲しげな瞳でラシェルを見つめている。
「つまりオレは偶然の産物でもなんでもなく、誰かに意図的に造り出された存在ってことだ」
  フィズは、誰が見てもわかるくらいに落ち込んでいた。
  下を向いたまま小さくうなずく。
「うん。羅魏はどうしても兵器としての考え方が強いから・・・だから人間のなかで暮らすことには向いてないの。人間のなかで目立たずに暮らすためには、人間としての考え方を持つ人格が必要で・・・」
  ラシェルは大きくため息をつくとぽんとフィズの頭を叩いた。
「そんなに落ち込むなよ。・・・・オレは大丈夫だからさ」
「うん・・・・・」
  フィズは下を向いたまま泣き出した。
  ラシェルはフィズに声をかけることもできず、フィズが泣き止むのを待っていた。
  十数分後・・・やっとフィズの涙が止まった。
「大丈夫か?」
  ラシェルは優しく声をかけた。
  フィズは泣きはらした顔をラシェルに向けて答える。
「うん・・・・ごめんね? ・・・その・・」
「いいよ。フィズが本当にオレのことを心配してくれてるの、わかるからさ」
  ラシェルは明るく笑って言った。
  唐突にラシェルの口調が変わる。さっきまでのフィズを気遣う口調ではなく、いつもの口調。
「明日出発しよう」
「え?」
「勇者さま探し。するんだろ?」
「でも・・・さっきは嫌だって・・・・」
「言った。でも前言撤回。オレだって世界中が怪物だらけになるなんてごめんだからな」
「うんっ! じゃあ私準備しなきゃ。また明日ね、ラシェル」
「ああ」
  フィズはにっこりとラシェルに笑いかけてから家に向かって走っていった。
  すこし元気を取り戻したフィズを確認してラシェルも家に帰る。
  しかしその表情はフィズと話していたときの明るい表情ではなかった。
  その表情はラシェルの祖父が死んだときに見せたものに似ていた・・・・・・。

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