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 IMITATION LIFE〜大地の歌・巫女救出編 最終話 

「星が落ちたのは百年前。それより前は発達した機械文明と魔法文明があったの。星との激突は一応避けられたんだけどね。でもやっぱり影響はあった。衝突はしなくても衝撃波は発生したし、そのせいで津波とか地震とかも起こった。
 街も村も形を残したとこのほうが少なかったし、この世界に住んでいた者もほとんどが死に絶えて・・・・・。運良く残った人達は必死に文明を建て直した。
 そうして教会が出来たのは八十年前。きっかけは人族の一人があたしを見つけたこと。
 その人は仲間を引き連れてきて晶族の村を襲ったの。
 あたしは本体でもある水晶を奪われて、取り戻しに行ったんだけど罠に引っかかってねぇ・・・・捕まっちゃって結界に閉じ込められたってわけ」
 そこでリムは言葉を止めた。その後のことはさっき話したからだろう。リムは八十年間あの部屋に幽閉されたまま、利用されていたという事だ。
「んじゃあと一つ。あの水晶って結局なんなんだ?」
「ん〜〜〜・・・善悪も何も持って無い、大地母紳の力のカケラ。この世界が造られた時からあるって伝えられてるわ。使い方を知らない者からすれば尋ねた問いに答を返すだけのシロモノよ。その水晶が自分を悪用されないようにするための自衛本能があたしって存在なわけ♪」
 とりあえず聞きたいことを一通り聞き終わって、隣を見るとそちらの方ももう終りそうだった。
 向こうも作業を終えてこちらを見る。
 リムは一歩扉の方に下がって、部屋にいる全員を見た。
「さ、脱出しましようか♪ ラシェル、出口わかるよね?」
 リムが問う。ラシェルは頷いて、先頭を立って走り出した。



 ラシェルが裏でいろいろやってくれてたと聞いたが、念には念を入れたほうが良い。
 とりあえずはスラムの方に向かうことにした。
「ラシェルはどうする?」
 そう問いかけたのはリムだ。それにシンが言葉を続ける。
「教会の連中にばれないとも限らないからな。一緒に来ないにしても教会の勢力下からは離れた方が良いと思うぜ」
 ラシェルは迷うそぶりすら見せずに首を横に振った。
「そうか・・・それじゃぁな」
 そうして、シンはラシェルと別れ、街のはずれにあるスラム地区へと向かった。
 目的地はカイの家。
 一度は巻きこまないためにとカイのもとを離れた。
 けれど水晶を失い教会は二つのものを失った。教会のみで独占していた魔法と、これ以上の機械技術の進歩。教会は魔法だけではなく、機械技術の知識も水晶から得ていたのだから。
 今まで散々”奇跡”の力で威張り散らしていたのだ。”奇跡”を失った教会が権力を失墜させるのも時間の問題だろう。
 そう考えたから、カイのところに行っても良いかという気分になったのだ。
 勝手知ったると言うか・・・遠慮も何も無しに勢い良く扉を開け放った。
「ちょっとシン・・いいの?」
「いいんだよ」
 流石に青くなったリムのことも気にせず、ずかずかと部屋に入っていった。
 奥の扉が開く。
「シン!?」
 そこから姿を現したのはカイだった。驚きに目を丸くしてこちらを見つめているカイにシンは明るい笑顔を送った。
「よっ。久しぶり、カイ」
「久しぶりって・・・何考えてるんだ! こっちはどれだけ心配したと思ってるんだ!?」
「悪い悪い。状況が変わってさぁ。教会はもう長くない。だから・・・」
 苦笑して言い訳のように言うシンの言葉を聞き流し、カイの目線はリムに向かっていた。
「で、そっちは・・彼女か?」
「違うっ! ・・・・水晶の片割れだよ」
 速攻思いっきり怒鳴り返してから、シンはにやりと不敵な笑みを浮かべた。
 カイは疑問の表情で聞き返す。
 それに対してはリムが自己紹介することで答えた。
「あたし、晶族のリムって言います。んっと・・・まぁ水晶の化身ってやつね」
 そうして、リムはシンに話したのと同じことをもう一度話した。
「ってことは教会の神話は嘘っぱちってことか」
「ん〜・・・一部本当・・かな。脚色されてたりするけど」
 重要な話・・のはずだが、リムからは妙に何となく軽い雰囲気が感じられる。
 最初に出会ったあのリムとは大違いだ。ただ本人に言わせると、そちらの方は意識の一部分でしかなかったためにボケていたのだそうだ。
 まぁそんなことどうでもいいけど。
「シンはこれからどうするんだ?」
 カイの問いに、とりあえずケリアのところにいくつもりだと答えた。
「事情ってのをまだ聞いてないし」
「ケリアさんも晶族なの。多分あのあと散り散りになっちゃったのね。ケリアさんは見覚えあるもん」
 言い終わるとリムはシンに向かってにっこりと笑った。
 シンはこんな感じの表情を何度か見たことがある。おねだりする時の表情だ。
「これでケリアさんの事情はわかったでしょ?」
「ああ」
「特にケリアさんのところに戻る必要もなくなったよね」
「・・・・・・・・・・・・・・」
 そういう問題でもないだろう。が、シンが黙っているのを良いことにリムはさっさと話を進めてしまう。
「あたしが捕まってる間、あたしお役目をこなせなかったの。普段はそれでもそんなに困らないんだけどね・・・ちょうど大地が回復しようとしてる時だったもんだから、特に大地母神様の御力が届かなきゃいけない時だったんだけど・・・」
「捕まってたせいでその橋渡しができなかったと」
 それに言葉を続けたのはカイ。シンは黙って聞いていた。
「うん。・・・それでやっぱり大地は力が足りなくて、回復できないままでいるの」
「このままいくとどうなるんだ?」
「・・・大地は作物も育たない死んだ土になって、誰も住めなくなる・・・・」
 突然言われた滅びに二人は顔を見合わせ、驚きを露にした。
「もう大地はほとんど死にかけてる。あたしの橋渡しでもどうにもならないくらいに」
「それ・・なんとかできないのか?」
「可能性はある。まだ大地母神様の力を受け取るだけの力を残してる場所に行って、そこであたしが力を使えばなんとかなる」
「その橋渡しって出来る場所が限られてるのか?」
 シンはてっきりリムが神の力を受けとって伝えるものかと思っていた。それならばどこにいてもできるではないか、と。
 それにここまでのリムの話からすると、神の力が弱まったわけではなく、大地の力が弱まったせいで神の力が届かないというのだから。
 その問いにリムはそういうわけではないと言った。
「えっとねぇ、大地に届いた大地母神様のお力を増幅させて、より広い範囲に行き渡らせるのがあたしの役目なの。人族みたいに自然との共生を忘れた一族の街なんかでは大地の受け取る力が弱まっていることが多いから」
「つまり、大地が受け取る力を残してる場所でなきゃ出来ないってことだな」
「うん・・・で、その場所を探したいの。協力してくれないかなぁ・・・・?」
 二人とも異論はなかった。世のため人のためなんてガラではないが、この大地が滅びるのは困る。
 二人は強く頷いた。リムが手を叩いてとびきりの笑顔を見せた。
「わーいっ、ありがとう♪」
 
 ここでやっと、シンはあの占いの”死”というキーワードの正体を知った。あれは大地の滅びを示していたのだ。
 こうして、シンは生きる力を残している大地を探して旅立つこととなった。
(妙なことに巻きこまれたな・・・)
 小さく息を吐いてリムを見る。ケリアとリムが連絡を取り合っていたとは思えないから、きっとケリアはケリアでリムを助けようとして盗みを依頼したのだろう。
 それがきっかけで、シンはリムと出会うこととなった。
 偶然と片付けてしまえるようなこと・・・だが、シンは思った。
 運命ってのは偶然の積み重ねで出来あがっていくもんなんだろうな・・・と。

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