三人は武器庫らしき建物の前にやってきた。
「・・・おっきい建物」
ルシオが建物を見上げて素直な感想を漏らす。
その時ラシェルはすでに扉を開けはじめていた。
「マコト」
「なぁに?」
作業の手を止めぬままに言うラシェルの後ろでマコトが答える。
「マコトはレオルのことを何か知ってるのか?」
「レオル?」
レオルというのは初めて聞く名前だ。マコトの疑問の声にラシェルは再度言い直す。
「さっきの銀髪の奴。前に会った時あいつ、レオル・エスナって名乗ったんだ」
そこまで言われてやっと誰のことを言っているのかわかった。けれどマコトも先ほど言った以上のことは知らない。そのことを告げるとラシェルはそうか、とだけ言って作業に集中した。
シュッ――。
小さな音を立てて扉が開いた。
早速室内の探索をはじめる。
「いろいろあるけど・・・・使い物になりそうなものって少ないねぇ」
マコトがあちこち物色しながら言った。それに答えるのはルシオ。ラシェルは一人離れて探索をしている。
「そうなの? でも珍しいものがたくさんあって面白いよ♪」
そんな風に二人は談笑しながらうろうろと調べまわっていた。
「うわっ」
向こうの方からラシェルの声が聞こえた。二人はちらっと顔を見合わせてすぐにラシェルのほうに走る。
「ラシェルさん! どうしたの?」
ラシェルはこちらを向いて、曖昧に笑った。
「あ・・・・羅魏のやつがいきなり大声出すもんだからびっくりしてさ」
「羅魏が?」
「ああ」
ラシェルは辺りをぐるっと見渡して一丁の銃を手に取った。
「それって確か魔力を吸収してエネルギーにするタイプの銃だよね」
マコトの言葉にラシェルが目を見張る。
「良く知ってるな」
マコトは胸を張って答えた。
「とーぜん♪ ・・・羅魏、これ見て声あげたの?」
「そうみたいだな。そんなに凄いものなのか? これ」
どうやらラシェルはこのタイプの銃を知らなかったみたいだ。マコトは早口にまくしたてる。
「凄いよ。魔力さえあればすっごい威力が出せるし、ちゃんと使いこなせれば氷の弾とか火の弾とかを撃ち出すこともできるんだから」
言われてラシェルは手の中の銃をまじまじと見つめる。
「よし! 試し撃ちしてみるか」
ニヤリと笑って外に飛び出す。
「ちょ、・・・ちょっと待って!」
ラシェルはその制止の言葉など聞いていない。マコトは慌てて後を追いかけた。
マコトが外に出るとラシェルはすでに狙いを定めており、あとは引き金を引くだけという状態だった。
「待ってってば。こんなところで撃ったら・・・」
その声を遮りラシェルは自信たっぷりに言う。
「大丈夫だって、いくら凄い力が出せるって言ってもまさか一撃でここが崩壊するようなことにはならないって」
ラシェルは、引き金を引いた。
そして・・・・・・――。
ラシェルも、ある程度その威力を予測していたマコトでさえも予想していなかったほどの強く太い光が一直線に走った。
その光はいくつもの建物に穴をあけ、支柱を失った建物が次々と崩れ落ちる。光が通った後、そこだけがすっきりと遠くまで見渡せるようになっていた。建物の向こうには壁があったのだがその壁にも穴が開いている。
「「・・・・・・・・・・・・・・・」」
二人は目をまんまるくして光が通った後と手元にある銃を交互に見つめる。
「・・・凄いっちゃ凄いんだけど・・・・・・・・・・使いもんになんねぇな・・・・」
ラシェルが呆然とした面持ちで言う。
――・・・・・・ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
なにか嫌な音が聞こえた。足元が微妙に揺れる。
「地震・・・・・・・・・じゃないよね」
「まぁ、そうだろうな」
二人は顔を見合わせる。ルシオはいつもの定位置、マコトの肩の上から二人を見た。
「ラシェルさんの嘘つきぃぃぃぃっっ!!」
「んなこと言ったってここまで凄いと思ってなかったんだからしかたねーだろ! とにかく逃げるぞ!」
言いながら二人は走り出だした。猛ダッシュで出口を目指す。その間にも遺跡は嫌な音を立てて崩れ始めていた。
三人が地上に出た直後。大きな音を立てて遺跡が潰れた。それに影響されて周辺のあちこちの地面が陥没する。
「なんかすごいことになったな・・・・・・・・」
陥没する地面を見つめてラシェルが言う。
「地下が潰れたら地面が陥没するのは当たり前よね・・・・・・・」
言わずともわかっていることだが、なにをどう言えば良いものやら見当もつかない。
「どうするの?」
ルシオが核心を突いた言葉を言う。二人が意図的に避けていた言葉でもある。
「どうしようもないだろ・・・・これは・・・・・」
三人は顔を見合わせる。
「とりあえず戻るか」
最初に口を開いたのはラシェル。
「そぉだね・・・・」
「うん・・・・」
そして三人は、半ば逃げる様にその遺跡から立ち去ったのだった。