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 IMITATION LIFE〜裏話・陽が沈む彼方へ 9話 

「ただいまー・・・・・・」
「あれっ? お帰りー♪ 早かったのね」
  三人の帰還をフィズが笑顔で迎える。
「まぁ・・・・いろいろあってな。ここじゃなんだから部屋に行こう」
  ラシェルは引っ張るようにしてフィズとともに部屋に向かった。
  その態度を不思議に思ったのかエリアルがマコトの前にしゃがみ込んだ。
「ねぇ。何かあったの?」
  マコトとルシオは顔を見合わせて苦笑いをする。
「ちょっと・・・・ね」
  言って逃げる様に上に向かった。
  ちょうどラシェルの部屋の前を通った時だ。
「ええぇぇぇーーーーーーーーーーーーっっ!?」
  フィズの大音量の悲鳴が聞こえてきた。理由は簡単に想像できる。遺跡のことを話したのだろう。
「どうすんのよ! 他の大陸に繋がる転送装置があるのはあそこだけなのよ!?」
  ・・・・えっ!? 最初苦笑して通りすぎようとしたマコトはバッと方向転換して扉の前に戻った。フィズは周囲を気にせず大声で話しているので聞き耳を立てるまでもなく、中の声が良く聞こえる。
「もうっ! サリスに行く方法が無くなっちゃったじゃない!」
「サリス!!?」
  突如聞こえてきた聞き覚えのある単語に思わず声が漏れた。
  話し声が静まる。
「・・・・・・マコト?」
  そして中から扉が開かれた。
「えへへ・・・・立ち聞きしちゃった・・・ごめん」
  マコトはばつが悪そうに笑った。
  奥からラシェルの声がかかる。
「マコトー、謝ること無いぞ。立ち聞きしようとしなくても聞こえるだろ、あの大音量じゃ」
  キッとフィズがラシェルを睨んだ。
「もとはと言えばラシェルが悪いんでしょ! もぉっ、なんで誰も止めなかったのよ」
  マコトはじと目でラシェルを見つめた。
「あたしは忠告したよ。ラシェルさん聞いてくんなかったけど」
「やっぱりラシェルが悪いんじゃないっ〜〜〜!!」
  フィズはラシェルに殴りかかりそうな勢いで怒鳴った。
  ラシェルは笑ってごまかすしかできない。
「あははは・・・だから悪かったって」
「んもぅ。本当に、どうすんのよ」
「ねぇ、フィズさんは長距離転移ってできないの?」
「え?」
  フィズは目を見張る。そしてラシェルとマコトを見た。
「ああ、マコトは全部知ってるよ」
  ラシェルの言葉をマコトが引き継ぐ。
「遺跡で羅魏のデータを見つけたの」
  フィズは静かにラシェルを見つめた。ラシェルは落ちついた瞳でフィズを見つめ返す。その表情を見てフィズは小さくため息をついた。
「ラシェルがいいならかまわないけどね。・・・で、話を戻すけど私は長距離転移なんてできないわ。いえ、構成魔法に長距離転移なんて存在しないと言っても過言ではないくらいよ。例外は良く知ってる場所・・・そうね、例えば自分の家に転移するとか、そのくらいかしら」
「そうか」
  ラシェルが肩を落とす。ほとんど自分のせいなんだから多少落ち込むのも当然だろう。
  マコトに一つ思い当たることがあった。
「ねぇ、元素魔法ならなんとかなんない?」
  ラシェルはそれがなにかわからないようで首を傾げたがフィズはハッとマコトを振りかえる。
「そっか・・・・元素魔法なら何とかなるかも!!」
  しかしその表情はすぐに暗いものへと変化する。
「転移は風属性。それを使えるのはフェゼリアとアルフェリア。フェゼリアはこの大陸ではすでに滅んでしまってるし、アルフェリアのいる場所なんて・・・」 
「あたし知ってるよ」
  マコトが自信たっぷりに言った。
「「本当!?」」
  ラシェルとフィズ。二人の声が重なる。
  言われてルシオは思い出すことがあった。ユーリィを出る時にマコトが言っていた言葉。
「そっか、シーグリーンだ」
「あったりー♪」
  二人は息もぴったりにパンっと手を合わせる。
  くるっとラシェルたちのほうを向いた。ビッっと人差し指をラシェルに向ける。
「あたしも一緒に行くからね!」
  二人はその勢いに気圧されてコクコクと頷いた。
「やったぁ♪ 本当は一人であそこに行くの不安だったんだ」
「一人?」
  ルシオがじろぉ〜っとマコトを見る。
「あっ・・・・・ゴメンゴメン。ルゥのこと忘れてたわけじゃないからね」
  慌ててごまかすマコト。
  とりあえずの目的地が決まり話も落ちついた頃、ラシェルがあの銃を取り出した。遺跡を大破壊してしまったあの銃だ。
  横からひょいっとフィズがそれをラシェルから奪い、手に取った
「まったく・・・・・・・・魔力の制御もせずにこんなもん撃ったら遺跡が壊れるのも当然じゃない!」
「えっ!? ラシェルさんってば魔力の制御できなかったの!? ・・・・・知ってたら意地でも止めたのに」
  二人の冷たい視線がラシェルに注がれる。ラシェルは本気でこの銃の危険度をわかってなかったらしい。えっ? えっ? ・・・と言った感じで二人の顔を交互に見ている。
「これはいい機会ね。せっかくだから魔力の制御法を覚えてもらいましょ」
「いらない。必要無いって」
「でも制御できたらこの銃使えるわよ。エネルギー補充の必要も無いし、今使ってる銃と違って使う前に設定変えなくても威力変えられるし」
  ラシェルの視線が上にさまよう。迷っているようだ。確かにこの銃の機能は魅力的だ。ただ慣れるまでが大変そうだが・・・・。
「よしっ! やってみる」
 
  だがしかし、それは全く別の問題を引き起こしてしまった。
  とにかくラシェルは魔法に関する物に対して異様なまでに呑み込みが悪かった。付き合いで一緒に習っていたマコトとルシオは初歩的なものながら魔法を扱えるようになったと言うのに、ラシェルはその頃になってもまだ基礎の基礎すらできなかった。
 結局、ラシェルがその銃を使うのに不自由無い程度に魔力の扱いを覚えたのはそれから半年以上も経ってから。マコトは一年近くもの時間をラキアシティで過ごしたのだった。

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